自然災害リスク軽減研究センター

研究テーマ4

水工学-地盤工学の連携による沿岸域低平地の自然災害リスク軽減への挑戦

テーマ

水工学-地盤工学の連携による沿岸域低平地の自然災害リスク軽減への挑戦

目的

 我が国の社会活動は地震や洪水による被災ポテンシャルの高い沿岸域低平地の都市部に集中しており,ひとたび災害に見舞われると甚大な被害となる.洪水や高潮から低平地を守る社会基盤は盛土構造物である堤防であるが,近年頻発する豪雨災害によって多くの堤防が被災している.さらに,先の東日本大震災では膨大な数の河川堤防が崩壊し,津波による2次災害を受けた事例も多い.もし,地震が梅雨や台風に重なっていた場合には,2次水害も甚大となったことは間違いない.一方,南海 トラフ地震が発生した場合に東海地方への津波襲来は確実であり,その際堤防が崩壊している場合には,名古屋市中心部までが浸水するとの試算もある.本研究では,水工学と地盤工学の研究分野の研究者が連携し,堤防の安全性評価の観点から沿岸域低平地における自然災害の被災リスクの軽減への挑戦を試みる.

内容

 本研究では以下の研究を遂行する.
① 各種河道条件を考慮した越流破堤現象の解明(溝口)
 河川堤防が越流破堤する場合,破堤箇所は河道条件の影響を受けるとともに,破堤時には河川内の水や土砂が堤内地に流れ込むため,被害は河道条件に依存する.本研究では,河川勾配,断面形状,河道線形などの河道条件によって越流破堤箇所がどのように決まり,破堤現象自身がどのように変化するかを明確にし,河川堤防の越流対策や越流後の被害軽減対策に河道条件を組む込む必要性の有無や,可能な被害軽減対策について検討する.
② 沖積低平地における堤防基礎地盤の海溝型地震時の震動特性の解明(小高・崔)
 東日本大震災で崩壊した河川堤防のほとんどは,軟弱な沖積層を基礎地盤としており,海溝型地震の長時間震動を受けてその基礎地盤が液状化や沈下した.例えば,液状化しづらいはずの細粒分を含む砂層がその下部層の粘土層の震動増幅によって液状化したり,粘土層自身が揺すり込み沈下するなど,未解明の現象が東日本大震災で多く確認されている.本研究では,海溝型地震時の堤防被災メカニズムの全容を解明するため,軟弱な基礎地盤の震動特性を明らかにするとともに,沿岸域低平地の堤防の被災ポテンシャルを明確にする.
③ 洪水ならびに地震時の堤防安全性照査技術の開発(小高・崔)
 堤防の安全性照査には,堤体材料と基礎地盤の力学特性のみならず,築堤履歴やそれに伴う基礎地盤の変形履歴も考慮すべきである.しかし,現行の堤防の安全性照査は,浸透破壊は浸透とすべり破壊を別個に検討する木に竹を接ぐような手法であったり,静的弾性解析に基づく耐震評価法であるなど不合理な点が多い.本研究では,豪雨や津波による洪水や地震などの各種の外力に対して,一貫して堤防の安全性を評価できる照査技術の開発を行う.