自然災害リスク軽減研究センター

研究テーマ 2

長期再来型災害に関する研究

テーマ

南海トラフ沖地震に対する事前準備及び発生時の支援・調査体制の高度化に関する研究

目的

 阪神淡路大震災後,建築構造物の耐震性能評価・耐震補強は順次進められてきたが,現在,耐震安全性評価手法が整備されているのは重層ラーメン建築構造に対してであり,動的挙動が複雑な大空間構造物(ドームなど)はその構造系式の特殊性から対策が困難な場合が多く,震災リスクの評価および軽減方法は模索の段階である.一方,大空間構造物は震災時には避難所や活動拠点として使用することが期待されており,震災後の復興という観点からもより一層耐震安全性評価が重要な構造物である.また,東海地域は東海・東南海・南海地震の発生が懸念されており,この地域で大空間構造物の震災リスク軽減を研究することの意義は大きいと考えられる.

内容

 対象とする大空間構造物としては,構造種別毎に,鋼構造,鉄筋コンクリート構造(以下RC構造)・木質構造の3種類に分けて進める.
・鋼構造:リスク評価のためには構造物の倒壊挙動を精度良くシミュレートする必要がある.構造物の倒壊挙動評価では部材の局部座屈が重要な因子となるが,大空間構造物において一般的な重層構造物より重要性が高まる軸力および2軸曲げ状態における局部座屈を考慮した要素モデルは現在まで提案されていない.本プロジェクトでは,倒壊挙動を支配する因子の内,部材の局部座屈に注目した局部座屈を考慮し得る梁要素モデルを提案し,3次元震動台を用いた動的実験および提案要素モデルを用いた数値解析結果を分析することで,大空間構造物の耐震安全性を評価する.
・RC構造:コンクリート系の空間構造はとしては,種々の曲面の適用や大規模化を始め,エネルギー関連の産業用容器構造として,地下埋設構造物や各種廃棄物貯蔵施設への適用と大型化が進行している.その中で主として耐震設計時における想定を超えるレベルでの機能維持や耐震余裕度の評価が課題となっている.本プロジェクトでは,動的荷重に対する動的な損傷・破壊レベルの推定に用いられるソフトウェアの開発を実施する.また,その検証を目的とした動的破壊実験を,RCを中心とし,炭素繊維補強によるアーチおよびシェル試験体により実施する(3次元震動台を用いる).さらに,評価の入力値に関する材料レベルでの検討も併せて行う.
・木質構造:平成22年の「公共建築物等木材利用促進法」施行を契機に,低層構造物での木質構造の検討が進んでおり,種々の接合金物・高耐力のパネル・免制震等デバイス等の開発と適用が進んでいる.本プロジェクトでは,これらの構造要素を数値モデル化し,強震時の挙動評価を可能とするための基礎的検討を実施する.具体的には静的加力実験と震動実験による検証を含めた数値解析モデルの提案を目標とし,耐震性能評価のためのシステムの検討を実施する.