自然災害リスク軽減研究センター

研究テーマ 3

豪雨および水災事象の発生機構とリスク軽減方策に関する研究

テーマ

豪雨および水災事象の発生機構とリスク軽減方策に関する研究

目的

 日本列島は台風の通過経路に位置するだけでなく,梅雨と秋雨の前線が停滞することによって,豪雨災害の起こりやすい地理的特徴をもつ.さらに近年の気候変動に伴い,局地型集中豪雨いわゆるゲリラ豪雨が頻発し,短時間にかつてないほどの強雨に見舞われるようになった.こうした気象的要因に加え,急峻な地形と脆弱な地盤をもつ我が国の地形的要因,近年の臨海低平地への人口と資産の集中といった社会的要因が複合することによって,豪雨に伴う洪水流や土石流による水害はますます激化し,21世紀型自然災害ともいうべき事態となっている.本研究では,短時間豪雨の発生とそれに起因する河川災害・山地災害について,気象学・水文学・水理学・砂防工学といった多面的な観点から検討するとともに,豪雨災害,とくにゲリラ豪雨に伴う都市域の浸水リスクと段波状洪水流の氾濫リスクの軽減に関して減災研究の推進もはかることとする.

内容

 本研究は,近年頻発している短時間豪雨の発生過程とそれに起因する都市河川の洪水流出過程,さらに山地河川における段波状洪水流の形成過程について,その物理的機構と発生頻度,防災対策を検討することを目的としている.本プロジェクトの最終目標は,豪雨災害の実態を科学的に明らかにし,そのリスクを軽減させる防災技術・減災対策の推進をはかることである.具体的には,以下の項目について検討する.
1.短時間強雨および大雨の出現特性に関する解析的研究 (広瀬)
 広域・長期にわたる衛星・地上観測降水データを用いて降水強度の確率密度分布を調査し,災害性の高い降水現象の出現特性およびその地域性を明らかにする.また,降水や台風の年々変化・経年変化について,各種観測データ・モデル結果を比較検証し,自然変動および推定誤差に関する現在の科学的知見を総括する.
2.短時間強雨に伴う都市河川の出水機構と流出抑制方策に関する研究 (原田)
 ゲリラ豪雨を捉えるため平成22年より都市域に配備されたXバンドMPレーダーについて,多数の地上雨量計群を用いた精度検証を行う.また,名古屋市内の都市河川を対象に,現地観測と解析を通じて,急激な流出過程の水理機構を解明するとともに,流出抑制対策として整備されつつある雨水貯留施設の有効性と施設の活用方法についても実証的に評価する.
3.段波状洪水流を制御する透過性砂防ダム群に関する研究 (新井)
 近年,強い降雨強度が長時間継続することにより,通常の洪水流とは異なる,土砂濃度の非常に薄い段波状の流れによる災害が報告されている.本研究では,フラッシュフラッドと呼ばれるこの流れの生成機構・生成条件や流下特性を明らかにするとともに,流れを制御するのに有効な透過性砂防ダムの構造や複数の透過性ダムによる制御方法について明らかにする.