礫質土の粒度評価におけるボーリング調査径に関する研究(テーマ4)

【背景と目的】
 河川堤防の基礎地盤の液状化危険度の判定には,粒度等によって判定の対象となる土層であるか判断した後に,主に標準貫入試験によるN 値を用いて判定がなされる。その際の粒度は,一般に標準貫入試験時にレイモンドサンプラーで採取した試料(通称,ペネ試料)から分析されている場合が多い。しかし,比較的大きな礫が混在する礫質土地盤においては,内径35mm のレイモンドサンプラーで採取したペネ試料だけでは実際の基礎地盤の原粒度を評価することは難しいと思われる。本研究では,河川堤防の礫質土基礎地盤を対象として,3 種の調査径でのボーリング調査を行い,標準貫入試験(ペネ試料採取を含む),コア試料のサンプリング,PS 速度検層,現場透水試験を行った。さらに,採取したペネ試料,コア試料に加えて,バックホウによる直接掘削で採取した原粒度試料も用いて,それぞれの粒度の比較検討を行った。

  
      図1 調査ボーリング孔毎に整理したペネ試料による粒度試験結果

【研究成果】
 ここでは,各ペネ試料およびコア試料の粒度分布について比較する。
 図 1には各ボーリング孔における全深度のペネ試料の粒度試験結果を示す。土質は深度方向に変わるのはもちろん,平面的にも厳密には同じではないので,図1(a)〜(c)の各図を比較してボーリング調査径の影響をむやみに論じることできないが,各深度の粒度曲線は,各図それぞれの曲線群の中においてほぼ同じ位置関係を示している。また,孔径が大きい?140mm の曲線のデータのばらつきは他のボーリング径と比べて,感覚的ではあるが若干大きいように思われる。
 図 2にはボーリング孔毎の全深度のコア試料による粒度試験結果を示す。ボーリングNo.1 の孔径?66mm のコア試料の粒度において,粒径5mm 程度からの礫の割合が急増する傾向が見られる。特に5m 以浅において,?66mm のコア試料の砂分の割合が,他の孔径のコア試料に比べて明らかに少ないことがわかる。図3 は各ボーリング孔にて採取されたコア試料の様子である。孔径により粒度が大きく異なった地表面からの2 本を見比べると,小径の?66mm のコア試料の中にコア径と同じ程度の大きな礫が複数混入していることが目視からもわかる。
 本調査の結果,礫質土地盤の原粒度を,標準貫入試験時に採取するペネ試料だけから評価するのは難しいことが示された。したがって,礫質土の物理特性(特に粒度)を正確に得るためには,ボーリングコア試料を用いる必要がある。今回,φ66, 116, 140mm の3 種類のボーリング調査径を採用したが,孔径が小さいφ66mm の場合には,逆に細礫以下の細かい粒径の土の含有率を過小評価する場合があり,より大きなボーリング径を用いる必要があると判断できた。ただし,適切なボーリング径は対象とする礫地盤の原粒度によって異なると考えられる。

  
図2 調査ボーリング孔毎に整理したコア試料による粒度試験結果

  
図3 各ボーリング孔にて採取されたコア試料

【関連論文リスト】

  • 石原雅規,小高猛司,原忠,李圭太:礫質土の粒度評価におけるボーリング調査径に関する研究,2013.
  • 小林芳樹,兼松祐志,小高猛司,崔瑛石原 雅規原 忠李 圭太,ボーリング試料による礫地盤の粒度評価と液状化対象土層の判定に関する考察,平成25年度土木学会中部支部研究発表会講演概要集,CD-ROM, 2014. 3.