各種河道条件を考慮した越流破堤現象の解明(テーマ4)

【背景と目的】
 異常気象等により想定外の降雨の発生などを要因として,最近は毎年のように堤防決壊等河川災害が報告されている.山地と比べ沿岸域低平地は出水時水位が高い状況が比較的長く続くことを考えると堤体への浸透現象が破堤災害を誘発させる可能性が高いなど各河道の特徴により破堤要因とそのリスクは異なる.また,河道と堤内地の条件により,破堤後の周囲に与える影響も異なることが考えられる.
 こうしたことを考慮し,本研究では,越流破堤に至るきっかけなどにも着目し越流破堤現象を解明し,破堤災害のリスク軽減として,場所の特徴を考慮したうえでの破堤予防策,破堤後の現象解明から破堤時のリスク軽減に向けた対策に向けた検討を実施する.

【研究成果】
 本研究では,まず越流破堤現象の特徴を把握するため,小規模堤防を用いた実験を行ってきた.昨年度までに,以下の二種類のアプローチで実験を行ってきた.
 まず越流にいたる要因に着目し,要因が異なる場合にその後の破堤現象に与える影響について検討した.特に,堤防から越流するきっかけとして,何らかの要因で外水位が堤防天端高さより低くなった場合と浸透現象によって堤体の変形が起こり越流する場合に着目した.なお,事前に浸透現象によって堤防の変形を促進させるために様々な検討を行い,小規模実験では堤防の基礎地盤に透水性が高い材料を敷設し基礎地盤の水圧を挙げることによって初めて堤防での法面破壊が連続的に起こせることが分かった.それを受け越流破堤の検討を行った結果,越流前に堤体の一部が浸透破壊を起こし変形した場合,越流時にすでに堤防が下方侵食を起こしているため破堤口から急激に大流量が出ること,また破堤過程は越流によって破堤口を天端から徐々に拡大させていくものとは異なることが分かった.
 次に,越流破堤が起こった後の破堤口拡大過程を変化させる要素を調べるため,まずは堤防条件自体に着目し堤体の質として堤体材料粒径の影響とコンクリートなどでの堤防の被覆を考え法面等被覆状態の影響について検討した.その結果,堤体材料が細かさは特に地盤の粘着性に関わるため破堤口の横方向の侵食過程を変化させること(図-1),あわせて川裏側の法面と堤防天端の被覆は越流時の初期侵食を抑える効果を持ち,図-2に示すように初期の洗掘場所を変化させ決壊を若干遅らせるなどの効果を期待できることが分かった.
 今後は,破堤過程や効果を再現できるメカニズムを数値解析に取り入れ,実スケールでの堤防の粘り強さなどを検討するとともに,河道条件による破堤の特徴の違いについて検討を行う予定である.

  
図-1 堤体材料による侵食の違い(越流後同時刻における破堤の様子)

  
図-2 被覆状態ごとの越流初期の法面洗掘の違い

【関連論文リスト】

  • 溝口敦子:越流の誘因が破堤過程に及ぼす影響の実験的検討,河川技術論文集,Vol. 19,土木学会,pp.45-50,2013. PDF
  • 溝口敦子:破堤のきっかけと越流破堤過程に関する実験的検討,土木学会第68回年次学術講演会講演概要集,U-26,日本大学生産工学部津田沼キャンパス,pp.123-124,CD-ROM,2013. PDF