粘弾塑性サスペンション要素法による乾燥収縮挙動のシミュレーション(テーマ2)

【背景と目的】
 構造物の耐震安全性を評価するためには,まず使用されている材料の性質を把握する必要がある。ここでは,鉄筋コンクリート構造物に使用されるコンクリートについて,ひび割れ発生の原因となる乾燥収縮現象について,粘弾塑性サスペンション要素法を用いて解析的再現を試みた。この解析手法は,コンクリートを骨材とモルタルの二相とみなした非連続体モデルによる解析であり,ひび割れの発生が視覚的に再現できる特徴がある。

【研究成果】
 解析結果の一例を図1に示す。この図は,下部拘束と左右拘束という2条件の収縮状況を示したものである。まず,下部拘束は壁面を基礎構造体が拘束している状況を模している。この場合,拘束される下部の節点位置はほぼ変わらず,上部にかけて小さくなる台形のような形で収縮しており,結果として下部中央部にひび割れが生じていることがわかる。一方,左右拘束は壁面を左右の柱が拘束している状況を模している。この場合,単純に左右が拘束されるため,縦方向にひび割れが生じていることがわかる。
以上のように,拘束状況によって収縮状況およびそれに伴うひび割れ発生状況が変化する解析結果が得られた。これらは実験および実大の構造物においても観察されるひび割れ状態であり,本解析手法でこのような拘束状況の変化に対応したひび割れの発生を再現できることが示された。


図1 拘束状況によるコンクリートのひび割れ発生状況の変化

【関連論文リスト】

  • 平岩陸,朴相俊:収縮ひび割れの発生に及ぼす拘束状況の影響に関する解析的研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.33, No.1, pp.490-495, 2012.7. PDF
  • 平岩陸,朴相俊:コンクリート壁の開口部における収縮ひび割れに関する解析的研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.34, No.1, pp.499-504, 2013.7. PDF