ウェブ幅厚比の大きいH形鋼梁のせん断座屈後耐力(テーマ2)
【背景と目的】
リスク評価のためには構造物の倒壊挙動を精度良くシミュレートする必要がある。本プロジェクトでは鋼構造物の倒壊挙動を支配する因子の内、部材の局部座屈に注目した局部座屈を考慮し得る梁要素モデルの開発を行っているが、本年度は欧州などで使用されるウェブ幅厚比の大きい梁部材のせん断座屈後耐力について、これまでに提案したフランジの局部座屈挙動に対する評価手法を拡張した簡便な評価手法を提案することを目的とする。なお、本提案手法は常温時についても適用できると考えられるが、本研究では震災時に生じる火災を想定し、高温時に対して数値解析的な検討している。
図1 解析モデル(L/d=2) 図2 最終変形(L/d=2,d/tw=200,A)
【研究成果】
幅厚比が小さい場合にはH形鋼梁部材のせん断耐力は全塑性耐力Qp(=Aw・τY)を下回ることはないが、幅厚比が大きく弾性座屈するような場合には弾性座屈後耐力は上昇するものの最大耐力は全塑性耐力を大きく下回る。本研究ではせん断座屈後挙動に及ぼす材料特性の影響も検討するため高温時材料特性をモデル化したラウンドハウス型(A)に加え弾完全塑性型の材料モデル(@)についても解析を行った。
図3に示すようにシアスパン比L/d=1のモデルでは最大耐力は全塑性耐力の0.8倍程度であるが、L/d=2以上で弾性座屈を起こすウェブ幅厚比200のモデルでは大幅に低下する。また、弾完全塑性体のモデルとラウンドハウス型のモデルでは停留値はほぼ同じだが最大耐力においては大きな違いが見られる。
図3 荷重−変位関係
フランジの局部座屈同様、ウェブの座屈の進展について弾性座屈変位で叙した無次元化変位を座屈進展パラメータとした座屈耐力関数を用いることで簡便に座屈後の荷重−変位関係を評価する手法を提案した。図4に提案した簡便な評価手法による結果(プロット)とFEMによる結果(実線,破線)を示す。幅厚比や材料特性に係わらず、本提案手法による結果は最大耐力および座屈後挙動を精度良く評価できていると言える。
(a) L/d=1, d/tw=100 (c) L/d=2, d/tw=100 (e) L/d=4, d/tw=100
(b) L/d=1, d/tw=200 (d) L/d=2, d/tw=200 (f) L/d=4, d/tw=200
図4 荷重−変位関係(提案手法とFEMとの比較)
【関連論文リスト】