鉄筋コンクリートの空間構造の性能評価(シェル)(テーマ2)

【背景と目的】
 コンクリート系の空間構造としては種々の曲面の適用や各種エネルギー関連の産業用容器構造としての大型化が進行し,想定を超える入力レベルでの耐震余裕度の評価が課題となっている.本研究ではこれらの構造設計や既存構造物の診断に際し,@構造設計時におけるモデル化と実機構造物の力学特性の差異,A長期に渡る特性の変化,等の把握が重要であるとの認識から,実機構造物に対する定性的・定量的な分析を実施し資料を蓄積する.

【研究成果】
 実機のシェルに対する適用検討事例として,劣化の無い新設のRCシェルの駆体のみの構造物を対象に振動特性の同定と変形の連続的な測定を実施した.
 振動特性に関しては,@実測で得られた固有振動数とコア抜き試験体による物性値を用いた固有値解析結果は良い一致を示す,A測定された減衰定数は一般的な構造設計の設定よりも小さく,Kobe波に対する応答変位は約20%程度増加する可能性がある,と示された.

   
図-1 検討対象と1次振動モード

 次に3年間に渡り,乾燥収縮・クリープ・温度変化の影響による変形特性の観測と,それらが耐力や振動特性に対する影響の評価を実施し,良好な推定モデルが構築可能な段階に至り継続してデータの蓄積を実施中である.

    
図-2 長期での現象と計測データの一例

【関連論文リスト】

  • 武藤 厚:「RCアーチの振動破壊とRCシェルの長期変形のシミュレーション」, 2013年度日本建築学会大会・構造部門(応用力学)パネルディスカッション資料(共著)〜建物の強非線形挙動の再現における可能性と課題〜, 日本建築学会, 応用力学運営委員会、pp. 32-39, (2013-8) PDF