既存構造物の初期損傷ならびに連動型大地震による複合劣化予測(テーマ1)

【背景と目的】
従来の鉄筋コンクリート構造物の劣化予測手法においては,耐荷性能と耐久性能の評価方法は完全に独立しており,供用開始直後の構造物に対してのみしか,地震力に対する安全性を評価することができなかった.本サブテーマでは,経年劣化等による初期損傷と地震等によって作用する外力による複合劣化を受ける鉄筋コンクリート構造物の安全性能評価手法を確立することを目的とする.

【研究成果】
(1) 部材レベルでの初期損傷問題の予測手法の確立
 初期損傷を考慮する際には,コンクリートのAgingと,温度変化や乾燥収縮等の体積変化に伴う損傷履歴を合理的に応力解析に導入する必要がある。本研究では,Solidification Concept(凝固理論)に基づいた材料構成則モデルを既存のFEM応力解析に導入することにより,Agingと乾燥収縮による初期損傷を同時に考慮した応力解析手法の構築を行った1)。本研究では,メニスカスの時間変化を考慮に入れることにより,乾燥収縮ひずみ自身の予測精度を高めている。乾燥収縮による拘束ひび割れ試験結果に基づき,提案した応力解析手法の検証を行った結果,本解析手法は,部材レベルにおいて乾燥収縮による劣化の程度をある程度予測できることを確認した。拘束ひび割れ試験結果と解析解の比較の一例を図-1に示す。

  
図-1 拘束ひび割れ試験結果と本解析手法による解の比較の一例

(2) パイプクーリングによる温度解析コードの強化
 任意のパイプレイアウトに対してパイプクーリングを考慮した温度解析コードの開発を行った。従来の解析コードでは,コンクリート要素の稜線上にパイプ要素を配置する制約があるが,本研究で開発した解析コードには,その制約が無く,コンクリート要素の任意の位置にパイプ要素を配置できること,さらには管網配置を可能としたことが大きな優位点である。分岐したパイプレイアウトを施したコンクリートのパイプクーリングシミュレーションの一例を図-2に示す。

  
図-2 分岐したパイプレイアウトを施したパイプクーリングシミュレーションの一例

【関連論文リスト】

  • 伊藤睦,石川靖晃,上田尚史,田辺忠顕:初期応力を考慮したRC 構造物の耐荷力解析手法の構築,コンクリート工学年次論文集,Vol.34,No.2,pp.19-24,2012. PDF