連続繊維複合材の破断,剥離損傷メカニズムの解明(テーマ1)

【背景と目的】
 コンクリート構造物の耐震補強材として連続繊維複合材(FRP)が広く用いられており,巨大地震等,衝撃を伴い大きな外力を受ける場合に,繊維材や接着材の損傷や脆性的なFRPの破断,剥離の発生が懸念されている。また,現在の国内外のガイドラインでは,耐震補強においてはFRPの破断モードを想定して設計することになっているが,FRPが本来の引張強度を生かし切れず剥離した場合には,補強効果が想定より低くなる可能性がある。さらに,地震により生じる高速荷重や環境劣化を伴う場合には,FRPの剥離が早まる可能性があり,実用化が既に進められている現状から,FRPの剥離メカニズムを明らかにすることは,急務となっている。 本研究では,様々な形状のFRPを対象として,その剥離メカニズムを,荷重速度および環境劣化を考慮した研究により明らかにする。

【研究成果】
 土木学会の指針に示されている,FRP−コンクリート界面の付着強さに関する評価実験(供試体の形状を図1に示す。)を高速荷重を考慮して実施した。なお,本研究では,材料コストの観点から,比較的低価格なバサルト繊維複合材(BFRP)シートを用いているため,静的な付着挙動を新たに検討することが必要となった。その結果,通常使用される炭素繊維複合材(CFRP)やアラミド繊維複合材(AFRP)シートを用いた場合と同様の付着強さ(図2に示すように界面剥離破壊エネルギーで表すことがある。)になることが,実験的に明確となった。図2に示すように,高速荷重を考慮した場合には,BFRPシートに負荷される引張応力が2倍以上程度に増加することが明確となった。これは,運動エネルギーが加算されることによるものと推測されるが,補強量をより増加させる必要性が生じる可能性がある。一方,過去の研究において,補強量(FRPのヤング率×厚み)と損傷モード(破断あるいは剥離)にはある一定の関係があり,その閾値より大きな補強量の場合には,早期剥離の可能性があることが示されているが,その閾値は明らかになっていない現状にもある。そこで,高速荷重が負荷されたケースを想定して,より大きな補強量を考慮するとともに,前記の閾値をより明確にすることで,効率的な補強量の明確化を進める。さらに,次年度以降は,環境条件を加え,複合劣化の影響に関する研究も進める。

  
図-1 両引き付着試験供試体の形状

  
 図-2 界面剥離破壊エネルギーの一覧

【関連論文リスト】

  • 岩下健太郎,佐藤大地,馬場 進,松本信行:バサルト繊維シートとコンクリートの付着特性,コンクリート工学年次論文集,日本コンクリート工学会, Vol.36, 2014.
  • 柴垣泰史,岩下健太郎,松本信行,神崎豊裕:BFRP シートの両面付着試験における荷重速度の影響,平成25年度土木学会中部支部研究発表会,CD-ROM,2014. PDF
  • 田中 竜蔵,大嶋 翔志,岩下健太郎:コンクリートに接着したFRPシートの有効付着長に関する研究,平成24年度土木学会中部支部研究発表会,CD-ROM,2013. PDF